自己理解(自己分析)の手始めとして、キャリア・アセスメントの代表選手、J.H.ホランド(John.Lewis.Holland:1919~2008、アメリカ)が提唱した理論を紹介しましょう。
ホランドは、アメリカの心理学者で、ジョンズ・ホプキンス大学の教授です。彼は、「人の行動は、そのパーソナリティと環境との相互作用によって決定される。」と、主張しています。簡単に要旨を挙げると、
- 人は6つの基本的性格(パーソナリティ・タイプ)として表現できる。
- 環境(仕事)も6つのタイプとして表現できる。
- 人は自分のタイプと同一(近似)の環境(仕事)を求める。
- 人と環境(仕事)の同じ組み合わせを探し出せば、満足度、充実度、貢献度が上昇する。
これは、人(性格)と仕事(環境)とのマッチング理論です。「その人の性格(キャラクター)に合った仕事が適職」ということですね。では、実際に簡単なワークで、これを確認していきましょう。
あなたに向いているお仕事を、見つけてみよう!(ワーク)
あなたのやってみたいお仕事(職業)は、何でしょうか?番号順にお取組み頂くことによって、あなたの性格と適職の関係が理解できるようになります。
①選択
(表1より、設問毎にお仕事を選択します)
設問1~6(縦列)にあるお仕事(職業)群の中から、設問毎に1番やってみたいお仕事と次にやってみたいお仕事をそれぞれ選びます。現状「できない」、「やったことがない」というお仕事でも、ここは「やりたい」という基準でお選びください。あんまり考えこまずに、直感で選んで下さい。下記にワーク用のファイルもご用意しておりますので、ダウンロードしてご活用下さい。
項目 | 設問1 | 設問2 | 設問3 | 設問4 | 設問5 | 設問6 |
R | パイロット (ドライバー) | シェフ (板前) | システム・エンジニア | 飼育係 (動物園・水族館) | 大工、建築 | 花の栽培 |
I | 医師 | 科学者 | 考古学者 | 気象予報士 | 測量士 | 薬剤師 |
A | 俳優 (女優) | 漫画家 | ファッション・デザイナー | 楽器の演奏家 | カメラマン | 作家 |
S | 保育士 | 教師 | スポーツ・トレーナー | 公務員 | 看護師 | カウンセラー |
E | 代表取締役 (社長) | 店長 | ホテルの支配人 | 販売、営業 | マーケッター | 外交官 |
C | 図書館司書 | 銀行員 | 税理士 (公認会計士) | キーパンチャー | 在庫管理 | オペレーター |
➁集計
(選んだお仕事(職業)について、それぞれ集計します)
選んだお仕事を、横行の項目(RIASEC)に対照させて、それぞれの項目が何個あるのか、集計します。
例えば、設問①で、医師と保育士を選んだなら、医師は項目「I」、保育士は項目「S」なので、それぞれ集計し、「I」項目:1個、「S」項目:1個となります。これを全5問×2個=合計12個抽出して、それぞれ集計していきます。
2個(選択したお仕事)×6個(設問数)=合計、12個の選択となっております。
③確認
(RIASECの中で、どの項目が多かったのか、少なかったのか、配置(順番)はどうなっているのか?を、それぞれ確認します)
最初に、RIASECの獲得数が多い順(少ない順)に、並べ変えていきます。そして、上位3位、下位3位の頭文字を、それぞれ繋げてみます。
例えば、「R」:2個・「I」:4個・「A」:3個・「S」:2個・「E」:1個・「C」:0個=合計12個となった方の場合は、
獲得数が多い順番:「IAR」(「R」と「S」が同数ですが、どちらにするかは、ご自身で決めて下さい。)
獲得数少ない順番:「CES」(上で「R」を選んでいるので、最後は「S」となります。)
と、なります。
上記のように抽出した3文字組のセットのことを「スリー・レター・コード」と言います。「スリー・レター・コード」は、3つの性格タイプの組み合わせを表しています。通常は、どれか1つが強くて、後の2つはそれほど強くないことが多いです。
④検討(スリー・レター・コード)
(「スリー・レター・コード」を使って、表2より性格と仕事の特性を検討します)
項目 | 性格 | 活動 | スキル | 適職 |
R:Realistic | 現実的 | 道具、物、機械、動物 などを扱う活動 (実践・器用・技巧) | 手作業 機械操作 電気関連 | 機械操作 組立 修理 |
I:Investigative | 研究的 | 科学など研究や調査する 活動 (探求・自立・好奇心) | 数学 科学 学術 | 科学 医学 |
A:Artistic | 芸術的 | 慣例にとらわれない、 創造的な活動 (自由・発想・イメージ) | 言語 美術 音楽 | 表現 |
S:Social | 社会的 | 人を育んだり、手助けをしたり する活動 (友好・育成・ケア) | 協力 支援 | 教育 保育 相談 |
E:Enterprising | 企業的 | 他人を導いたり、影響を与え たりする活動 (外向・自信・精力) | 管理 説得 リーダー | 商品販売 人事管理 |
C:Conventional | 慣習的 | 情報を明確に秩序立て、 整理する活動 (緻密・正確・信頼) | 事務 計算 組織 | 記録管理 計算 タイプ操作 |
先程の事例で検討していきましょう。多い順の「スリー・レター・コード」は「IAR」なので、一番向いているお仕事が、「I」の研究的なお仕事(医師など)、次に「A」の芸術的なお仕事(画家など)、その次が現実的なお仕事(機械メンテナンスなど)となります。逆に少ない順の「スリー・レター・コード」は「CES」なので、一番不向きなお仕事が「C]の慣習的なお仕事(事務など)、次が「E」の企業的なお仕事(営業マンなど)、その次が「S」の社会的なお仕事(教師など)となります。
RIASECは、下記(図1)のように、基本的な配置順が決まっております。時計回りに「R」→「I」→「A」→「S」→「E」→「C」となり、六角形の頂点に配置します。ある一つの性格タイプを中心に据えた場合、それの両隣のタイプは、中心のタイプと近い関係にあります。中心の性格タイプと、その対角線上に位置するタイプについては、真逆の関係にあると言えます。
先程の「IAR」のスリー・レター・コードで、これを見ていきましょう。(図1)を見ると、「I」を中心とすれば、両隣は「A」、「R」なので、その性格特性が強く発揮されることとなります。そのため、お仕事も先述したものがより適したものとなります。
逆に「I」の対角線上は「E」となり、この「E」が「I」の真逆な性格タイプとなっています。これは、研究的タイプ「I」の方は、企業的タイプ「E」のお仕事にはあまり向かないということを意味しています。(「E」タイプの人は、「I」タイプのお仕事には向かないというこになります。)
ワーク・タスク・ディメンジョン
(図1)には、「データ」⇔「アイデア」、「ひと」⇔「もの」(黄緑色)という括りもあります。ホランドが非営利のACT社を退いた後、この研究を受け継いいだプレディガー(D.P.Prediger)は、ホランドの六角形のベースとなる基本原則の研究を始めました。彼は、その基本原則が、4つのワーク・タスク(ひと・もの・データ・アイデア)から成り立っていることを、発見しました。
「I」タイプならば、「もの」、「アイデア」がベースとなります。確かに研究者は「もの」を取り扱い、「アイデア」を閃いて法則などを発見しますよね。勿論、「データ」を扱うこともありますが、「データ」そのものを分類、管理することが目的ではなく、その目的は新たな知見や法則を見出すためにあるので、「最終目的が何であるのか?」が、重要になっていきます。
自分自身が、「対物」or「対人」、「対データ」or「対アイデア」、「自分の志向性は、どちらが強いのか?何を目的とするのか?」ということを、日頃から把握しておくと、お仕事に関する自己理解(分析)が進んでいきます。対応関係を(表2)にまとめておきます。(キャリア・クラスターとは、ホランドの性格タイプを職業タイプとして対応させたものです。これが発展して、「ワールド・オブ・ワークマップ」となります。)
ホランド・タイプ | キャリア・クラスター | ワーク・タスク |
R(現実的) | 技術 | もの |
I(研究的) | サイエンス | ものとアイデア |
A(芸術的) | 芸術 | アイデアとひと |
S(社会的) | ソーシャル・サービス | ひと |
E(企業的) | 管理的ビジネス | ひととデータ |
C(慣習的) | ルーティン・ビジネス | データともの |
まとめ(ホランド理論を使った自己理解)
ホランド理論に基づく自己理解(自己分析)について、解説していきました。ここでは、
〇人(性格)と環境(仕事)が同じ組み合わせを探し出せば、満足度、充実度、貢献度が上昇する。→性格特性に見合った仕事を選び、合わない仕事は選ばない。
ここで紹介したワークはあくまでも、簡易な分析です。より詳細な分析については、有料版での分析(キャリア形成の地図参照)をお勧めします。また、厚労省のHPにも、職業興味検査(無料)として、ネット上で検査ができますので、こちらを利用されるのも良いでしょう。
これらの結果だけで、就活先を判断するのは早急です。これ以外の方法も含めて、多角的に自己理解(分析)を行い、総合的に判断することが必要です。他の自己理解(分析)方法についても、今後シェアしていきます。